辻惟雄さんによる近世異端の芸術展が行われたのは、71年くらいのことでありました。著作の「奇想の系譜」の出版記念と合わせた展覧会であったように思います。それほどお客は入っていなかったような記憶がありますが、評判になったことは確かです。私もその時、初めてこれらの画家と絵の存在を知りました。彼らの絵は日本人好みという意味からは、相当に違っていましたから、何となくでも何でも知られるようになるには時間がかかりました。こういう絵に着目したのは外国人の方が早く、辻さんにしても外国人の後を追う感じであったでしょう。海外に流出する危機感から奇想の系譜をまとめたことが後書きにあります。
 若冲も相当長い期間、まったく注目されず、二束三文で海外に売られたといわれます。蕭白なんかは特にそうであったでしょう。それが今日では、若冲は北斎に並び称せられるほどになっているのは、まさに隔世の感があります。それでも蕭白や芦雪は、やはり日本人には生理的に受付けない部分もあって、人気は盛り上がりに欠けます。最初の展覧会が蕭白・芦雪を中心に、と副題がついている意味がよく分かります。辻さんにも最初から日本人好みでないと分かっていたのでしょう。

江戸 奇想画


岩佐又兵衛
奇想の画家の中では最も正統派に近い画家なのではないかと思います。絵をそんなに見ていないので、ここでの注釈は控えます。


狩野山雪
この捩れまくった松の絵が最も知られた作品です。



伊藤若冲
超細密な描写力が絶賛される若冲です。高い注目度から、近年になって発見される絵もあります。この装飾性から象徴主義の雰囲気もあります。


曾我蕭白
Wikipedia「・・醜悪、剽軽に描き出すなど表現は型破りで破天荒なものであり、見る者の神経を逆撫でするような強い印象」まぁ、ここらが日本人としての正直な感想でしょう。


   寒山拾得図

長沢蘆雪
応挙の弟子としては相当に変わり者というか、逸脱の度合いが強い人です。動物画は誰よりも巧いと思うのですが。



歌川国芳
Wikipediaには随分、書き込みがあるので付け加えることは多くないですが、浮世絵画家としては、コレクターの蒐集対象から外れていた人です。そういう意味では、遅れてきた写楽みたいなものですが、写楽は作品数が非常に少ないですが、国芳はとんでもなく多いです。



絵金
70年ごろに注目されていたのは、上記の奇想の画家達ではなく土佐の絵金でした。極彩色の泥絵の強烈な印象が時代背景もあって当時、強く印象付けられたように思います。何冊も画集や研究書が出版されましたが、今はかつてのような人気はありません。



月岡芳年
奇想の画家とは分類されていませんが、幕末から明治にかけて最後の浮世絵師とも、血みどろ芳年とも言われています。


この年表は辻さんの書籍に付いていたものです。横長ですが参考までに。