人材育成の失敗

 組織論ではラインの末端、小売業では店舗で、どのような組織を作るかが最大の問題である。そしてその小さな組織の長、工場でいえばフォアマン、職工長に当る人間を、如何に育てるかが企業の第一命題である。
 何故、ラインなのか、売上と利益はラインから生み出されるものであって、スタッフ部門はそれをサポートする、支援することだけだから。スタッフ部門と言うのは、アウトソーシング、外注化できるが、ライン部門は外注化できない。もちろん小売業では究極のラインの外注化も可能で、それがフランチャイズであったり、ボランタリーであったりするのだが、それはまた、商売が違うので別の機会にふれることにしたい。

 非常に大組織になった小売業は、いったいどんな人材の育成をしているのだろうか、そんな疑問を感じることがよくある。話に聞けば人事異動は相当に頻繁に行われ、特に店長クラスは一つの店に長くいることは少ないという。
店舗という企業の最前線にいる人達の養成は、企業の命運を握るし、店内のスタッフの養成や、作業の改善、顧客の維持・管理、納入業者へのフォローなどが、ひどくおざなりに行われ、その改善や運営方法についても、頭でっかちの本部スタッフに全面的に委ねられていると感じる。スーパーバイザーの指導も、自身の経験以上のものがないのではないかと疑われる。顧客に向き合わない商売の恐さがある。
 こういう地味な話というのは、雑誌にも載り難いのかもしれないが、以前より良くなっている印象がない。バックヤードに金をかけている店や企業を知らない。標準化され、どこの店に行っても、同じ場所に同じ用具があり、マニュアルによって整然と作業されている光景を寡聞にして見たことがない。欧米のスーパーのバックヤードを見たとき、配送センターを見たときの感動が、日本ではない。

 組織で一番大事なのは現場の組織、現場の小さなチームワークであると、教えを受けた私には、労働力の多くをパートに頼っている業として、我が国の優秀な女性の能力に負んぶに抱っこ状態の経営の危うさを感じないではいられない。そして、それがまさに起きようとしている。
 小売業として商売ができる人間を養う制度を持たない人材育成とは何であるのだろうか。商売をする意味が最も大事なのではないか。
例えば安土氏の本の中に、オールラウンド・プレーヤーを育てるために、新入社員に店の各部門に半年づつ研修させる話が出てくる。社員の誰でもが肉や魚を調理できることを誇らしげに述べているが、確かに調理も大事だし全部門を経験することも大事だが、それで個々の商売が分かるはずがない。マニュアルに従って作業することだけを覚えただけではないのか。
 職人を排除することは良いが、職人が持つ技術は誰がどのように継承するのだろうか。変わらないといっても、これだけ時代が変わっていく中で、十年一日の方法で商品化が可能なのか。結局は納入業者に頼る形になるのではないだろうか。
 惣菜でいえば、もはやかつてのようなメニュー、包装単位、パッケージ、価格では通用しない。パートのお母さんの料理では無理になっている。それと同じことが精肉でも、鮮魚でも起きている。結局は外部委託による加工が主流になり、スーパーの利益は縮んで行くことになるだろう。



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