物流の放棄

悪名高きセンター・フィー


 納入価格は店着価格を基本としており、スーパーの配送センターに納品する場合は、各店への配送代として納入価格の何パーセントかを納入業者から取り立てるのを商習慣としている。普通に考えれば店着価格より価格は安くなり、その差額がセンターから店までの横持ち運賃分に相当し、合理化によって、より安くなれば、スーパーが物流を担うことで、その分の付加価値を得ることが理屈であるだろう。

 ところが実態では、センター納品が故に、価格を安く買い叩かれた上に、店までの運賃をセンターフィーという形で一律、仕入価格にパーセンテージをかけて徴収されている。一般にそれで店舗配送がまったくなくなったのではないことが多く、まるまる納入業者負担になる場合が少なくない。挙句の果ては、急ぎなどの店側の事情で店着商品であっても、センター納品扱いとしてセンターフィーを徴収する例さえも、通常のようにみられる。

 何故、このようなことが起きているかというと、センター建設費がセンター利用率を高めないと償却できないスーパー側の事情による。もともと問屋の多くは自社配送のルートを持っているが故に、センター納品によって反って非効率になるケースが頻発し、普通であればセンター利用率は非常に低くなってしまう。

 確かにセンターがあるが故に、店に納品車が集中する事態が避けられ、近隣の住民の不満を抑えることができたことは大きいことであったろう。
しかし、実際はそういう問題が出る以前として、アメリカのスーパーでは配送センターがあり、スーパーというのは自前の配送センターがあるのが当然であるという理屈から建設されたのが、本当の話である。
このため出店計画と配送センター計画は別のものとして始まり、ドミナント出店の考え方が生まれるのは、実にコンビニの登場まで待たねばならない。

 ここにも理屈だけが先行したスーパーの悲劇というか喜劇がある。




SCM構築にはほど遠い

 店舗に関する技術は、スタッフ部門に店舗開発部をおき、様々なノウハウを蓄積している。標準化が困難な点は数多く、立地にあわせた、施設にあわせた設計を強いられることは多く、現場からの注文、メンテナンスやユーティリティ(電気、ガス、水道、通信など)も、整理されているかどうかを問わなければ、それなりの努力が行われている。建設業者の方もアメリカなどから、ノウハウの吸収も怠りない。

 ところが配送センターから、店のバックヤードの受入や、ゴミや輸送容器(カゴテナー、通い容器、台車など)のリターナブルな関係になると、途端に貧相になってくる。基本的に蓄積する技術も、人材も配置しない。処理量の把握も不完全であり、この間の物流の標準化が行われていないために、多くの混乱を人手でまかなう形が横行している。コストも把握されない。このため納入業者からコスト上昇分を毟り取ろうとする形が多くなり、業者の不満は高まるばかりである。どこにも論理性がない。

 このことから配送センターの外部化、大手の問屋に窓口を集約化し、特定スーパー向けの専用センターを問屋に作らせ、管理運用も行わない形が強まっている。コンビニで取り入れられた方法である。

 コストは、すべて納入業者である問屋が負担する形で小売業には良いことづくめのように見える。しかし、本当は違う。短期的なメリットだけで、長期的なコストの配慮をしない小売業の姿がある。

 技術は何のために必要なのか。合理的な投資によるコストの削減こそが最大の狙いであり、それを納入業者側に委任すれば、ノウハウは納入業者側に移り、付加価値は納入業者に生まれてくる。リスクを負担するところが利益を得ることができるという原則からすればスーパーからは、サプライチェーンによる合理的な利益を生み出すことが困難になるのである。

 コンビニは業者が作るセンターを建設・運営のすべてについて、とことん管理し、生産性の向上に非常な努力を傾けている。納入業者の付加価値を、絞りに絞っている。

 この違いは非常に大きい。サプライチェーンは納入業者が作るものであってスーパーはそれを利用するだけという本末転倒がまかり通っている。


カゴテナー荷役の非生産性  

 日本のスーパーの物流機器の中で他国には少ない、特にアメリカではほとんど見られないものが、カゴテナーの利用である。アメリカでは物流はパレットが基本形で、フォークリフトが店内荷役でも使われる。ある種、日本のスーパーの特質をあらわしていると考える。

 カゴテナーは多品目、しかも各種のサイズの段ボールなどの容器を収納するのに便利で、動力を持たないので、商品を積んで人手で容易に動かすことができること、小回りが利くことが特徴で、日本のスーパーでは非常に広範囲に使用されている。青果物ではカゴテナーでの納品が求められ、市場や納入業者の店舗では大量にみることができる。また、配送センターと店舗間の物流はほとんどカゴテナーで行われ、生鮮の魚や肉、日配品は温度上昇を防ぐシールドを付けたカゴテナー、またはロールボックスが使用されている。

 この小ロット多品目の物流は、膨大なコスト、人件費の塊である。センターや店での仕分、検品は納品業者に店別仕分させても、作業のボリュームは大きく、カゴテナー中心の仕分、出荷バースへの移動は手作業である。大型店ではカゴテナーの出荷数が数百台に達する場合もある。近年のセンターは在庫を持たないトランスファー・センターとなっており、頻繁な入出荷はセンターの負荷を高めている。にもかかわらずセンターフィーを徴収しなければならないのは、取扱いロットが小さいことが最大の要因である。

 近年、多頻度納品が常態化し、ロットはますます小さく、手間はますます拡大している。バイヤーがセンターのコスト、納品業者のコストを無視したというか、コストがかかっているという意識すらない態度が事態をより混迷の度を深めている。

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