闇の紳士達〜総会屋〜


 バブル崩壊は、ある種の浄化作用、社会の闇を押し流す力であったと、このコラムを書きながら考えていました。

 バブル前後から様々な、普通なら闇に隠れている人達が表の世界に顔を出すことになり、我々は日本の社会の闇の一部を垣間見ることができたからです。そこでは表の立派な人達と思われていた成功者と、闇の世界がピッタリと寄り添う世界であったことです。

 闇の紳士達を語るのに私がふさわしいとは思えません。確認しようもない話が多くあります。皆さんが興味を持って調べるきっかけとなる人名と事件を並べていきます。


 別冊宝島186「これがパクリだ」を読むと、一流企業を闇の連中が食い物にする最初の契機は、日本熱学工業の倒産(負債総額600億円)を巡る事件であったようです。別冊宝島の中では社長であった牛田氏とのインタビューが掲載されています。倒産は1975年ですから、バブル時代のはるか以前の話ですが、その手口は次に述べる蛇の目ミシンを巡る闇の勢力の暗躍と近似するものがあります。一部抜粋しながら宝島から引用します。
 日本熱学工業は、横綱輪島を使ったTVCMで、空気売ります、100円玉1個で一時間の涼風をキャッチフレーズにレンタルコインクーラーを販売し、大人気を拍します。これは当時、クーラーが庶民には高値で買えないということが背景にあります。たとえ数時間でも涼しいことを望む期待に応えるもので、創業から17年で年商360億円、今なら数千億円の感覚でしょうか。超優良会社ともてはやされ、株価も急上昇します。倒産後、牛田社長は粉飾決算、違法配当、株価操作、手形乱発などで逮捕され、副社長は自殺することになるのですが、この倒産劇に政治家、財界人、都銀、大手家電メーカー、右翼、ヤクザ、ブラックジャーナリストが寄ってたかって食い物にする凄まじい話があります。ここにはあらゆる経済犯罪の手口が使われたとされ、M資金導入話、海外ダミー会社を介しての株横領、政党本部での手形詐取、北海道原野商法まがいなどなど、繰り返される“潰し屋”たちの大胆で複雑にして珍奇な手口は、映画のようだと書いてあります。
牛田正郎社長

 そしてバブル前から中期にかけての闇のヒーローは、総会屋崩れとも、兜町の帝王ともいわれる小谷光浩です。

 

 小谷が率いていた会社名から光進事件とも言われます。稲川会の企業舎弟であった小谷は兜町の帝王と呼ばれ、仕手集団として、一度の相場で2000億円を動かすともいわれました。最初に世間の注目を集めたのは上場会社であった蛇の目ミシン工業の乗っ取りでした。小谷の手法は、当時、アメリカで大流行したM&A、株をかき集めて役員として会社に乗り込み、会社の優良資産を切り売りし、会社を叩き売って膨大な利益を得るもので、無借金経営の超優良企業であった蛇の目ミシンを食い物にしていく姿は、やがて起きるイトマン事件などを髣髴とさせるものです。
 これに味をしめ、次に航空測量大手の国際航業の乗っ取りを手がけ、次いでトヨタの部品供給を行っていた小糸製作所に仕掛けをしたところで最終局面に至ります。小糸製作所関連ではアメリカの自由化圧力と、アメリカのファンド、アメリカの自動車メーカーまでからみ大問題に発展します。中曽根、三塚の政治家の名前も取り沙汰され、株操作で大手証券会社の名前もあがり、資金の供給先として大銀行の名もあがる大スキャンダルになっていくのです。 小谷から始まる、バブル崩壊後にあらわになっていく闇の紳士達の深い交流関係もまた、衝撃的な内容を含むものでした。小谷自身は90年7月、藤田観光の株価操作の容疑で逮捕されます。


中曽根康弘論から
 1990(平成2).7.19日、証券取引法違反(株価操作)容疑で東京地検特捜部に逮捕された仕手集団・光進の小谷光浩、中曽根の有力な政治団体である山王経済研究所のメンバーであった。この小谷という男はもともと不動産業畑の人間で、飛島建設や三井不動産の先兵となって、地上げや底地買いを手がけ、荒稼ぎしてのし上がった。
 国際航業乗っ取り事件にからむ小谷容疑者との関係では中曾根氏の金庫番・山王経済研究所の会計責任者)・太田英子女史がつっかえ棒役を果たした。小谷は太田英子女史との間で同社株10万株の相対取引をして、1億2千万の差益を得さ せていることが明らかにされている。

論談ニュースから
 蛇の目ミシン工業恐喝事件などにからむ同社元取締役に対する株主代表訴訟の判決は、小谷光浩元取締役に会社に対し939億円の損害を与えたと認め、939億円の賠償を命じた。 蛇の目ミシン恐喝などにからむ一連の事件は、株の買い占めで著名な仕手集団「光進」にかかわるもので、光進の恐喝事件(融資の強要、株式買い取り要求の際の恫喝など)。判決は、小谷光浩は、同社の株式を大量に買い占め、取締役に就任しながら、大株主としての地位を利用して自己の利益を図り、自らの債務を蛇の目ミシンの関連会社などに肩代わりさせるため、蛇の目ミシンや関連会社に債務保証させるなどして、同社に対して合計939億円の損害を与えた。


 後日談ですが、一人悪者にされた小谷でしたが、その背後に無責任な経営陣と銀行が結託して小谷の横暴な要求に応えていたことが明らかになり、旧経営陣に対する株主代表訴訟が起こされます。最終結末がつくのは、実に事件から25年、代表訴訟が起こされてからも15年という膨大な時間が費やされたのです。
蛇の目株主代表訴訟、元社長ら5人に583億円の賠償命令
 仕手集団「光進」元代表の恐喝に応じて蛇の目ミシン工業に巨額損失を与えたとして、同社の株主が旧経営陣に賠償を求めた株主代表訴訟において2008年10月3日、最高裁は23日、森田暁元社長ら5人に583億円の賠償を命じた。 判決理由で同裁判長は、旧経営陣が光進の小谷光浩元代表=有罪確定=の不当要求に応じたことは「東証1部上場企業の取締役として稚拙で社会常識と懸け離れた対応だった」と指摘した。』

ドキュメント・株価操作 (Kou business) 小谷光浩と仕手に群がった紳士たちの深層!
私物国家(広瀬隆)も日本の闇を探る意味では大変、参考になります。