貧乏と犯罪

 豊かな時代が何十年も続いていく中で、若者達も中年の人々も貧乏が分からなくなっていきます。この時代は、貧乏はお笑いの対象であるバラエティネタになります。

銭形金太郎


 銭金のTV画像がこの間まであったんですが・・。貧乏さんは、いくつかのパターンに分けられていました。
@自給自足貧乏さん・・・田舎住まいが多く、電気、ガスなしで自給自足をしている人
A芸術家貧乏さん・・・・・芸術家または芸能人を目指すが、まだ売れない人
B発明家貧乏さん・・・・・発明に全生活を投入しているために貧乏になっている人


この貧乏さんの中には、とりあえず芸術家貧乏だけれど、努力らしいことをほとんどしていない人の多くが、アパートの一人住まい、部屋の中はゴミに埋もれている形が出てきます。どん底の喘ぎでも取り上げますが、あちらは精神的な病が内包する感じですが、こちらはただひたすら貧乏で、だらしない。臭い、汚いのオンパレードです。


日本貧乏菌研究学会「爆貧菌」
西原理恵子「しまこちゃん物語」

 こういう切羽詰った感覚と脱力した、だらけた気分がごちゃまぜになるというのが、この世界というものかもしれません。町田康が描き出す世界にもどこか共通する何かがあるようにも思います。


 さて2000年代の初めの頃はこんなものでしたが、2010年頃になると、厚生労働省が相対的貧困率なるものを提示し、日本は世界的に貧富の格差が激しいという論を垂れ流し始めます。それに日本の左翼人士が乗っかりまして、日本は格差がアメリカ並みだと騒ぎ始めます。こんな話はネットのコリアウオッチングの爺様にも論破されるような代物ですが、自殺者数の話と同じように、立派な大学の先生などが世間に垂れ流す妄言となりました。爺様の論にあるように中央値が違うので世界の他の国に比べて貧困率が高く、格差が大きいとはいえない、むしろ下位の所得の高さと中央値の近さからすれば、世界に冠たる格差の少ない、豊かな国になる。
 こんなこと垂れ流す大学の先生は役所の言うがままである、算数ができませんと白状するようなものです。

犯罪の奇形化

 犯罪は奇妙な形に歪み、変態化していきます。女性がこれ以前の時代と異なり、セクハラ的な行為に対して猛然と抗議し犯罪行為になったことで、男の立場が変わった中でフラストレーションがねじれて行ったのかもしれません。中でも盗聴や盗撮は電子機器の小型化が可能にした犯罪です。これはまるでスパイ映画そのものでした。

ストーカー
 ある人間への強い執着が生み出すストーカー行為は、90年代の末でも、それほど重大視しなかったことがあり、不幸に殺人事件が発生します。桶川ストーカー殺人事件です。その際の警察の対応に激しい非難が集まります。この事件によってストーカーが認知されたと言ってよいでしょう。その後もルーシー・ブラックマン事件などストーカーによる殺人が発生しますが、警察は敏速に動くようになります。
桶川ストーカー事件の犯人

山本英夫「のぞき屋」

盗撮
 アイドルのパンチラ写真から始まった盗撮は、その対象を普通の人々に向っていきます。バックや靴にカメラを仕込み路上で女性の下着を写す事パンチラから始まって、女子中学生を狙った体育のブルマ姿、会社や学校のトイレにカメラを仕掛けるものなどに広がり、それ専門の雑誌まで出版される事態になっていきます。これらの犯罪に警察官や教員までが行い、社会的にも大きな衝撃になります。やがてカメラのシャッター音を規制し、音を出すことが義務付けされるようになります。

山本英夫「のぞき屋」 

盗聴
 これもスパイ映画のような感覚ですが、女の子の部屋に盗聴器を仕掛けて録音、盗聴するもので、盗聴される方は極めて気持ち悪いものですが、さて聞く方はストーカー的な思い入れが無ければ、難しいのでしょう。盗聴を発見する商売があったりして、これまた、ワケワカメの展開です。


コンセントに仕掛けられた盗聴器
                     山本英夫「のぞき屋」

別冊宝島216「ヘンな広告」

女性の部屋などに仕掛けられた盗聴器の実態!

 社会の暗部に対する関心が高まる中、そういう専門の雑誌が売られるようになります。販売量は相当なものだったような感じがします。

鉄人社                                ワニマガジン社

 こういう犯罪ものに対する関心なのか、普通の人には縁のない異界という認識なのか、刑務所の中や死刑への関心が高まり、刑務官や実際の体験話の何冊かの本が出版されます。漫画家の花輪和一さんも自身の体験を漫画にしています。その中でも異色であったのが、右翼の活動家であった見沢知廉さんの「天皇ごっこ」、「囚人狂時代」などで医療刑務所の実態などが暴かれます。天皇ごっこは映画にもなりました。



そして外国人犯罪
ピッキング行為
 1990年代に錠前を、鍵を使わずに、また破壊せずに、開錠するピッキング用の器具が通信販売などで大量に出回ったことから、窃盗やストーカーなどを目的とした住居侵入が起こり始めます。しかしその被害は大きなものではなく、盗聴と同じように気持ち悪いという反応がしばらく続きます。ところが1990年代末からは外国人集団(とりわけ中国人が多い)によるディスクタンブラーを狙った犯罪がマンションを中心に多発します。中国福建省には日本での泥棒稼業によって建てられた通称「ピッキング御殿」があるといわれています。

山本英夫「のぞき屋」



外車盗難
 90年代も終わりの頃、中国の発展から高級外車の需要が増大、それに目をつける形で、仕入代金0の盗難が増え始めます。 「RV車」「高級外車」「国産高級車」などをターゲットにした盗難事件が頻発します。犯行の手口は、トランク部分のシリンダー錠を取り外しキーの形状を読み取って合い鍵を作ったり、ピッキングと呼ばれる工具でドアを開けハンドルの下のロック部分を破壊してエンジンを始動させる、といったような特殊な知識と技術をもったプロによる犯行が急増し、きちんとロックしてあったにもかかわらず盗まれるケースが全体の6割を超えるようになります。盗難車を山積みした貨物船や、港に高級外車が並ぶという光景が現れます。
 さすがに問題視され防犯用のイモビライザーの取り付けが外車に普及する事態になります。警察の摘発も進み始めます。


あなたの愛車が、ある日アフリカで見つかるケースも。 日本発「盗難車」転売ルートを追う


建設重機盗難
 2006年。『御殿場・沼津・三島市など県東部で今年に入り、建設重機の盗難被害が相次いでいることが県警の二十六日までの調べでわかった。 一月下旬から三月下旬にかけて、十八件の被害が発生した。県警は窃盗事件として捜査を進めている。
 調べでは、盗まれた建設重機は油圧ショベルが十六台、トラクターショベルが一台、フォークリフトが一台。 御殿場市で六件、沼津市で四件、三島市で三件、小山町で三件、長泉町で二件の被害が発生している。 盗まれた場所は工事現場や資材置き場、空き地など。エンジンキーは抜いてあったケースが多かったが、現場でトラックの荷台に積み込まれ、そのまま持ち去られた可能性が高いとみられている。』 地域防犯情報ブログ

 この他、関東、関西方面でも数十台が盗難に遭うケースが頻発し、すべて海外への転売を狙ったもので、夜間、人気の無い重機の保管場から盗難車の専用運搬車をつかって犯行に及び、追い駆けるパトカーとのカーチェイスまで繰り広げられたのです。



ATM破壊
 2006年、屋外に設置されたのATMコーナーをパワーショベルで 壊し、現金が入ったATMを盗むという乱暴な手口が全国で頻発します。

為栗ニュース



 このような犯罪が増えるに従って防犯機器が沢山売られ、犯罪防止するサービス業も大発展を遂げていきます。皮肉と言うべきか、バブル崩壊で元気の良い産業の一つになります。
 ・スタンガン(高電圧を発生させて相手を威嚇・撃退できる携帯用の護身機器)
 ・催涙スプレー
 ・特殊警棒
 ・フラッシュライト(暗闇警戒や防御撃退)
 ・防犯ブザー
 ・防犯カメラ
 ・カラーボール(相手に叩きつけて色がつくので証拠になるもの)
 ・金属探知機    等々ですか・・。


特殊警棒の使い方です。

ゴミの輸出/金属製品盗難
 これは犯罪ではありませんが、しばらく前から中古品の発展途上国などへの輸出が静かに行われ始めていました。一番、有名なのはロシア向けの中古乗用車でした。
ウラジオストックの日本の中古乗用車置き場
 東南アジアなどにはオートバイや自転車、家電製品なども目立っていました。

日本からの中古家電置き場(アラブ首長国連盟)

 それに転機が訪れ、中古品ではなくゴミまでも扱われるようになったのが、90年代も終わりに入る頃でした。発展する中国は資源の高騰を生み出し、ありあまる膨大な農村の人手を使って日本を始めとする先進国から廃棄物(ゴミ)の中から使える物、資源の回収に乗り出します。輸送費のみというか、引き取ってもらえるものなら金を払ってもという先進国側の事情もあって、膨大なゴミ、主に産業廃棄物、燃えないゴミが中国に集まります。中国には重金属廃棄物という健康被害が起こる物も、平気で作業員を投入し、宝物探しのような光景が現れました。 それらの回収を集中的に行う村までも現れ注目されました。



 下は日本の廃棄物輸出量2005年です。これは分かっているだけのもので、コンテナ単位で中身がグチャグチャのものは到底、この対象になるものではありません。

「廃棄物最前線」から
 これは国際的な取り決めであるバーゼル法違反ですから、当局は問題がテレビ報道がされ始めると取締りに乗り出し、輸出は制約されると、日本国内で中国人などによる盗難が相次いで発生し、道路脇のガードレールなどが盗まれるという、明らかに日本人ではない犯行が頻発します。

「廃棄物最前線」から