自殺/失踪

自殺
 リストラ、ローン地獄に追い詰められた中高年を中心に自殺が急増します。かつてのように若者が自殺の中心ではなくなり、中高年こそが自殺者の中心に位置づけられていきます。リストラから逃れたサラリーマン達にも、減った人の分の仕事が圧し掛かってきて、過労死に追い込まれます。自殺が労災の対象になったのは、この時期からです。東京の中央線や富士山麓の青木ヶ原など、自殺のメッカが生まれます。人身事故のアナウンスが流れ、毎日のように電車がストップしました。

上の写真は自殺とは関係ないのですが、何となく恐い感じがするので掲載しました。写真は椎名誠です。
    
自殺スポットとされた踏切                      青木ヶ原の看板

青木ヶ原
飛び降り自殺
 
 Wikiから、『完全自殺マニュアルは、1993年(平成5年)7月に、太田出版より初版が発行され、以後重版を繰り返し、100万部以上を売上げる大ベストセラーになった』。自殺者数は平成10年(1998年)、前年に比べて8千人増大して3万人時代が訪れます。
 ただ、私はこれは統計上のマジックが働いているのではないかと、疑いの目で見ています。これほど数字が思いっ切りジャンプすることはありえないことだからです。多分、それまで自殺としてはカウントしていなかったものを、カウントするようになったのだと思います。
 これにマスコミは、躍り上がるように喜んで、時の自民党政府を激しく攻撃するようになります。特に小泉内閣になっても、自殺者は減る気配も見せませんので、失政の象徴として何度も取り上げられることになります。
 さて、この完全自殺マニュアルです。不況の中で追い詰められた人ばかりでなく、大きな関心が寄せられるのは、高齢化が相当に進んできたというより、非常に多くの人々が長生きするようになり、アルツハイマーとか、惚けによる徘徊とか、介護の問題がクローズアップしてきたことが、大きな要因と思われます。ああはなりたくない、それなら、家族に迷惑をかける前に自殺しようという動機です。死への関心が次第に高まってくる時代の顕われでしょう。



 自殺者数の平成10年にジャンプする理由が分かりました。それまで遺族が自殺と死亡原因を書かれる事に抵抗、医師に心不全と記載することを望み、慮っていたものが、問題となっており、欧米並みにしようということで、死亡診断書あるいは死体検案書に自殺と書かれるようになったためのようです。世間体が問題になる男性の数値が飛び跳ねる理由でもあります。偶々、この時期になったことで不況が大量の自殺者を生み出したというのはマスコミが作ったお話です。こういう自分達に不利になるような報道をしないのがマスコミの特徴ですし、これに踊らされた人も訂正しませんし、分かっている人も声高には主張しないというか、マスコミが取り上げないのです。
警視庁



 
世情の不安が影を落とし、ネットで自殺願望者を募り、集団で自殺を行う事件が頻発します。自殺者を募るサイトを自殺系サイトと呼び、こういう自殺の仕方をネット自殺、ネット心中といわれました。Wikiでは集団自殺としています。マスコミはこの新たなネットの影の部分に飛びつきます。連日、大報道を繰り返し、それに煽られるような形で頻発します。青酸カリをネットで販売する犯罪(ドクターキリコ事件)もありましたが、心中という形で、これまで会った事のない人間が、車の排気ガスや練炭を使って3人ないし4人が同時に死にました。

 ところが、2005年、自殺系サイトで快楽殺人を嗜好する犯罪者が、いじめなどを苦に死にたがっている人を物色し、集団自殺を主催すると偽って呼び出し、リンチなど自分の嗜好を満たす目的の自殺サイト殺人事件が起きます。これによってマスコミの大報道は止まり、自殺系サイトへの自主規制も強まり、終息へと向います。

失踪
 不況に関係しているとすれば、こちらの完全失踪マニュアルやテレビドラマになった夜逃げ屋本舗でしょう。そしてその逆の立場は格差社会でふれるナニワ金融道であったでしょう。夜逃げをサービスとする業者が現れてきますが、映画のように善意に溢れている訳ではありません。多くは債権者の一人と結託して、その債権者の分のみを返済し、後は踏み倒すというもので、逃走には、トラックを何台も乗り継ぐやら、子供の転校のための住民票の移動からキャッチされることの無いよう何重もの、後から探られない方法が構築されたようです。ただ、当然のように逃がした業者の方はよく知っている訳ですから、逃走した時期も含めた膨れ上がった借金の追い込みが逃走先にも、行われ、地獄を味わらされたようです。


 いかにして借金地獄に陥らないか、借金地獄から抜け出すか、そして罠に嵌めた連中への復讐劇が、映画や漫画を通じて国民的関心を呼んだことは、この時代の大きな特質です。
 もう一つは、このバブル崩壊の中で、闇の勢力に関わった投機の失敗による偽装自殺、あるいは拉致されて失踪するという事件が頻発していることです。保険金殺人は遺体がなければ成立しませんから、この点は大丈夫ですが、口封じで殺されるという恐い話です。借金地獄に落ちた人間は、女は多く風俗に売り飛ばされますが、男は借金の取立て屋に代わる場合もあって、被害者が加害者に入替わるというものもありましたし、担保物権に居座って、権利を主張する役割を振られたりもしています。

海外逃亡
 バブル崩壊以降、東南アジア、タイやフィリピンに逃亡する形の失踪やら、逃亡者が金を持っていることを狙っての殺人やら、秘密を知っているが故の謀殺やらが横行します。一文無しになって現地の女のヒモに堕ちていく男達が大勢いたようです。日本に帰るに帰れない中年過ぎた男達がバンコックの安宿、マンションに流れ着く世界がありました。


 この時代に借金に追われた元ボクサーの人が歌舞伎町で殴られ屋を始めます。マスコミにも取り上げられ評判になりました。ただ、分かりませんが、そんなには長くは続かなかったようです。多分、体力が持たなかったのでしょう。生身の身体で金を稼ぐのは辛どいものだったでしょう。こんな話題もあったという程度のことではありますが、時代の持つ雰囲気の一つです。
写真は渡辺克己

ブラック企業
 90年代の後半から、サービス残業が普通に蔓延し、サラリーマンの職を失う危険に付け込む企業が多数となりましたが、それ以上に過酷な労働を強いる企業が2000年前後に現れ始めます。ここらの話が浮かび上がってくるのは、就職に苦労する若者達が、自らの苦境を綴るブログが切欠でした。ブラック企業と命名され、ネット上で有名になりました。中には長優良企業とし新聞やマスコミにしばしば登場する企業もありました。企業の方では当初は完全無視で、労働条件を変えようという意思も見せず、大量雇用大量退職を通常としました。
 しかし共産党が名指しで非難するあたりから事情は徐々に変わっていきますが、それはこのバブル崩壊の時代を抜けた年となります。