(3)建値市場

2)建値市場の参画者

 建値市場の再建には、まず参画者のあり方が問われます。

 建値市場を構成するのは生産者代表、農協や漁連でしょうか。彼らは確かに商品を持っていますが、彼らは生産者の収益を確保しようと価格の操作を行うでしょう。往々にして大量の在庫を抱え込み、まともな経営はできないのが普通です。
逆に大量購入者であるスーパーや需要先でしょうか。彼らは商品を購入する力がありますが、できるだけ安く買い叩きたい。次の調達のために、ある程度の価格が認めようという意識をスーパーに期待する方が間違っています。買う立場の我がままが働きます。
 この両者には、もう1つ決定的な問題があります。彼らはサラリーマンであり、減点方式の評価にさらされていることです。失敗でき難い体質を内包しています。サラリーマンであることは、一方方向に流れやすい体質を持ちます。今日、多くのスーパーは、市場の買参権を持っていますが、買参の資格を価格形成に使用している例はありません。スーパーにとって納入業者が提示した価格を叩く方が、担当者の責任が発生しないのです。

 建値市場への参画者は、やはり卸売業者です。卸しか担い手にならないのです。証券市場が事業会社や投資家自身が証券の取引に直接参加しないのと同様です。そのことが社会的な何かを引き起こすことはありえません。
 建値市場の参画者は、当然のように資格審査が行われ、ルールを守ることが求められ、資格を失えば退場する、この当然の理屈で運営されます。それが国家であろうが、市場内部の取り決めだろうが同じで、内外の信頼、建値市場としての自身の価値を決定することになります。参画者の更新は、今よりも厳密でなければならない。

 現在の市場は、荷受と仲卸に区分され、自己売買が禁止され、基本的に上場物品は当日中に売り切る形であり、完全な現物市場です。そこに公正、公開、公平の原則が打ち立てられています。これは生鮮品という需給が激しく変動し、日持ちがしない、品質の差が著しいという特性と、零細な生産者を守ることを前提にした仕組みだからです。
 しかし、この生鮮品という特性が技術革新により、先に述べたように在庫による需給調整がある範囲で可能になってきた、つまり一般の商品取引に近似してきているのです。
 全国流通商品では、出荷者はメーカー感覚が強まっており、それ故に計画的な出荷、コストに見合う価格への要求が高まっています。
この流れの中で、果たして荷受と仲卸の区分が本当に必要なのかです。零細な生産者を守るために行われた集荷を荷受によって独占する意味は失われている。集荷独占の見返りに与えられた仲卸に販売を独占させる意味もなくなった、つまり荷受と仲卸に区分する根拠がない。
 ここで問題なのは、かつて国家の力で強引に荷受、仲卸に分け、独占事業体として巨大な荷受を作り、それが今日、資本力によって仲卸を圧倒する力を保有していることです。ここで荷受、仲卸の境目を無くした時に、荷受による独占的な流通支配が起きる可能性があり、建値市場の信頼が著しく損なわれる可能性があることです。
 建値市場がなくなれば、生産者は拠り所を喪い、需要者や卸売業者による出荷者の系列化が起きる可能性があります。国内生産よりも輸入品を主体にした形になっていくかもしれません。様々な点で不都合であり、トラブルが発生します。生産サイドの混乱の責任は重く、高齢化が進む国内産地の壊滅をも惹起する可能性があります。

 形骸化が進んでいるとはいえ建値市場において今日の荷受がどのように、あるべきかの問題です。それは同時に建値が現状のままで良いのかがあります。今でさえも、ある種の操作が建値に加えられ、人為的なものです。それを支えているのは、市場の扱い量であり、市場法の存在です。建値市場が現物の価格だけで良いのかという問題もあります。今後、荷受自体が川下の販売を強化していく形になれば、より自社が有利になる形の価格を演出する可能性があります。マーケティング・ボードに対する信頼は、生産の問題に直結します。このことを、よく考えておく必要があります。

 建値市場をどう構築するかは、大問題ですが、そのことを行政はどこまで感知しているか、はなはだ疑問です。

 これだけ情報物流ネットワークが発達した中で、それこそ半世紀以上前に構築した仕組み、構成メンバーで運営されることに、疑問を持った方が良い。建値市場の構成メンバーは今までと同じ荷受会社、仲卸で良いのか。個々の市場は物流的にはそのままにしても、全国流通する商品についての相場は集中化することも検討すべきではないか。そして多様な取引に対応する形の、現物以外の相場形成も念頭に置くべきではないかと思うのです。新しい公正、公平、公開の原則を打ち立てる時期が来ているのです。

 建値市場の卸売会社のイメージは、現在を基準とすると日本有数の扱い量を誇る企業をイメージしますが、必ずしもそうではないことに注意する必要があります。建値市場は、あくまで正当な建値形成ができるという信頼が産地やスーパーを始めとした需要者に生まれるということです。

 市場に今、問われているのは零細な仲卸の問題ではなく、荷受の経営はどうあるべきかの問題です。