食品卸売業の将来像

供給側へ参入

(生鮮品)

 生鮮食料品の卸にとっての生産側へのアプローチは、産地に近いところならば、生産に関わる様々なサービス、資材関連の貸し出し・提供やら、債務保証、実際の生産への労務支援、技術支援などがあり、それこそ農協や漁協に代わるものや、農協、漁協と共同した支援があり、国内産地を維持し、良質な生産物の確保に繋げるものです。

 海外産地においても、かつての中国のように、人件費の極端な差異をつかって、ぼろ儲けすることが次第にできなくなっていますから、国内と同様の産地開発、産地育成となってきており、地道な努力が必要になってきているという意味で、変わらない状況です。商品の売買だけでは、大きな利益は望めない状況の一端です。

 大消費地にある卸は、産地の市場を、産地を囲い込むのと同じような意味で囲い込む形が想定されます。一部には、そういう動きも出てきています。卸が農協や漁協を囲い込むことは、実際には不可能に近いことですから、産地市場の卸の方が、互いに流通や産地に共通認識を持っている分、扱いやすいといういか、支配関係を作りやすい側面を持ちます。

 ここら辺は、産地市場が明瞭で、それなりの規模を持ち、なおかつ大消費地への出荷をメインとする業者が多くいる水産関係の方が進んでいそうですが、これが意外に駄目で、大消費地卸の産地市場への支配関係は弱いものでしかありません。むしろ産地市場の卸はスーパーとの直取引を志向し、加工施設を整備し、大消費地の卸よりも進んでいる部分があります。水産では大消費地卸は、輸入関係や加工品の品揃え、業務筋関係の高級魚の取扱いあたりが強味というか、生き残る形を作る感じになり、現状は精彩を欠いていますが、積極的な商品開発、産地開発を行うべきだと思います。


(加工品)

 かつて明治屋や国分は、自社のPB、缶詰が中心でしたが、積極的に開発し販売していましたが、最近は、なくなりはしないですが、維持している状況のようです。ここら辺については残念ながら、統計的な数字データしかなくて内情は全然、分かりません。まぁ、成熟したマーケットなので、マスコミ的にも注目度が低いのが現状です。

 このような従来型の加工品に対して、チルド系の加工品の動きは活発です。製造・卸という形が多いのも、特徴の一つで、卸売業の製造への関わり、進出の部分もありますが、現時点では製造業の方が卸的な関わり、つまり自社が製造したものではないものも、品揃えとして納品する、あるいは他社で生産したものに自社のブランドをつけて販売する、特に後者が非常に多いという特徴があります。

 卸の製造への進出は、比較的簡便な流通加工に近いものでは、非常に多くみられます。特に生鮮関係に多く、魚で言えば、三枚卸から始まって、刺身の盛り合わせ、焼き魚、煮魚などの加工に進んでいく形は多くあります。野菜関係ではカット野菜、サラダのパック、レトルト加工したおでんセットなどがあります。

 製造業の進出というと、ひどく大げさに考えられる所が多くありますが、付加価値をつけて販売するという意味では、それこそ江戸の昔から行われていたことであり、顧客の要望に応えて加工するという意味では、まったく同質です。

 商品売買だけでは限界があるのは昔も今も変わりません。成熟したマーケットであり、もう工夫の余地がないというのは、思考停止です。最近話題になったもので言えば、キャラメルなんていう、本当に衰退というか、成熟したものとみなされていたものが、生キャラメルという形で再生するということが起きました。自分達の扱っている商品が、どのようなものであるか、本当に、このまま衰微していくのかは、よく考えるべきことがあります。
 マーケットは、ますます小さくなり、特殊な商品を受け容れられる土壌が、物流、情報の発展によって可能になってきました。沢山の商品を扱う卸売業の本来の力を発揮できる地盤は整ったと私は考えています。


(物流・情報システムの構築)

 将来像の中で、情報・物流という卸売業のインフラ整備に関わる部分での進出、新たな事業作りは、可能性は高くありません。というのも、この四半世紀、様々な形での試行錯誤があり、行政のバックアップもある中で、事業化できるものは、それなりに事業化しました。大変、残念ながら、卸売業の新たな形が作り出せたことも、少なかったし、コスト削減への貢献度も、期待ほどには高くありませんでした。

 それでも時代は流動していますから、可能性がない訳ではありません。チルド商品がマーケットの中で比重を増していった時に、チルド物流を専業とする新たなサービス業が構築されたり、コンビニ向けに多品種小量高頻度情報物流システムが出来上がっていったように、これからも新たな形で出現する可能性はあります。特に生鮮品の場合は、農協や漁協まかせの出荷体制には問題があり、卸側がネットワークを張れる可能性を有しています。

 可能性を見出していくためにも、この分野における関心を高めておくことが、まず第一に必要です。多くの卸売業は、こういう業務系の仕事に対して関心が低く、ノウハウらしいノウハウもなく、業界で横並び的な非効率性があります。どうやったら物流の品質を高め、高スピード、低コストで運営するかを追求しておかないと、チャンスを逃すことになります。配送センターも、驚くべきほど低コストで設営可能です。情報システムでも同じです。ソフトウエアというのは作り方によって、コストがまったく違うものです。ソフトウエア会社の言いなりに費用を負担することは、私から言わせれば、馬鹿げたことです。
 
 競合する卸に対して差別化できるノウハウの一つに物流・情報関連もあるのだということを、知ることと、社内でできなければ、有為な人材を外部から引っ張る形も、必要な場合が少なくありません。卸売業の人は自分の商売以外の外部の人を巧く使うことができない場合が少なくないですが、そんなことを言っているから、なかなか脱皮できないということもあります。