食品卸売業の将来像

サービスの商品化

 今、無料で提供しているサービスを有料化を図る必要があります。有料化により、これまでとは格段に違うサービスが提供できる形を作る、つまりサービスの商品化を図っていくことが、第一に考えられます。無料の場合は、この程度、有料の場合は、このレベルまで、もっと高いレベルには、これだけの料金が懸かるという具合にです。
 サービスの商品化のためには、作業の分析を通じた専門化が不可欠です。専門スタッフを養成することです。こういう仕事は、比較的女性が取り組みやすいものであるし、女性も現場に投入されることで活力も出ます。どういう専門化が可能なのかは明日にします。

 サービスの商品化は、頭の中で考えれば、いろいろありますが、多分、事業化なり、職種として独立できる範囲は限られるでしょう。アメリカは参考になりますが、流通の風土の違いは大きな壁になるでしょう。私が、ここでヒントにしたいのはファッション業界です。

 今日のファッション業界は各種の専門性の集合体としてできあがっています。単なる店の売り子にもハウス・マヌカンという、現在では死語となっているようですが、名前をつけて、職種としての誇りを植えつけました。ファッション関係の職種は以下のようなものがあります。

  ・マーチャンダイザー(商品の仕入れから販売までの総括責任者)
  ・マーケティング・ディレクター(マーケティングプランの提案、キャンペーンの実施、コンテンツの制作)
  ・マーケター(商品開発し販売促進を行う)
  ・デコレーター(商品の店舗におけるディスプレイ)
  ・アタッシュ・ドゥ・プレス(ブランドの広報)
  ・スタイリスト(商品をアピールのため、小道具をコーディネート、ファッションイメージを創りあげていくこと)
  ・セールス・インストラクター(販売員への教育)

 食品を扱っている人達には、ひどく遠く感じられるかもしれませんが、卸が小売の販売員を教育すること、スーパーでの売り方について提案することは、今後、益々、重要だと考えるのです。以前、市場の卸の中に、スーパーの売り場で主婦を惹きつけ、売るのが素晴らしいほど巧い人がいました。こういう人材がスーパーの店頭にいたら、どれだけ売り場が活気づき、売上が上がるかを考えました。彼のノウハウに留まっている限りは、卸としての売上への貢献は低いでしょう。そういう人間を見つけ、専門化し、商売、金を稼ぐことに繋げられると思います。

 デコレーター(商品の店舗におけるディスプレイ)の可能性を考えます。メーカーや卸の展示会に行くと、ディスプレイの提案が数多く見ることができます。なかなか魅力的なものも少なくありませんが、これがスーパーなどの売り場に展開された例は非常に少ないのが実態ではないかと思います。これは什器の変更が必要なことが大きな要因でしょう。1台の什器を換えれば済む問題ではなく、店舗全体に波及するからでしょう。
 また、チェーンストア・エイジなどの雑誌で、メーカーが懸賞をつけて、モデル的な陳列を募集、表彰をしていますが、これも懸賞対象メーカーに限定されることで、提案として、あまり評価が高いものとはいえないのではないかと思います。まぁ、販促としての効果はあると思いますが。

 では、今のスーパーの陳列に問題がないかといえば、問題は山積しています。何よりもメリハリがなく、売り場だけ見ただけでは、大手だろうが、そこらの中小スーパーだろうが、見分けが付かないくらい同じ品揃えであることが、ほとんどではないでしょうか。
 私のように目的買いがほとんどで、頻繁に特定の店舗を訪れない者にとっては、どこに何があるかを探すのが、どこのスーパーだろうが、非常に大変です。その関係の棚を見つけてからも、自分の欲しい商品が、どの段に収納されているか、本当にあるのかを探すのが、これまた、大変です。
 これはある種、客に浮気させないためのスーパーの作戦かもしれませんが、それにしてもと思わないではありません。何故、ここにこの商品があるのか、理解し難い場合も少なくありません。どう考えたって、買う客はいないだろうと、内にも、こんな商品があるんですよと、アピールするほどの価値がないとすれば、何だという感じです。
 まぁ、こんなことを書いていると切りがありませんが、個々の店の陳列や品揃えに、多くのスーパーがマニュアル通り、あるいはマニュアルも守れない状況にある。ただ並べておけば、客が選んで買ってくれるという状況のままにあるということです。工夫する余裕もなければ、工夫しようという気持ちもない。

 これはある種のビジネス・チャンスではないでしょうか。ただ、よほどの才能の持ち主以外には卸がいきなり、陳列の提案なんかできる訳もありません。やはり、店舗経営のノウハウが要ります。私は、卸もモデル店舗でいいから小売を自身で試み、ノウハウの蓄積をする必要があると思います。ただ、我が国の卸は個人性が強すぎることから、せっかくノウハウを得ても、組織としてのノウハウに結実していかない問題がありますので、それを踏まえた上で取り組みをしてもらいたいと考えます。

 いまだ析出されていないサービスの可能性は、論じることはできますが、現実化には才覚が要ります。形になる場合もあるでしょうが、失敗の可能性の方がはるかに高い。これは我が国の卸売業が欧米のように機能別に編成されるのではないかという学者の論理と同じです。



(卸売業の機能別再編の可能性)

 商業というのは文化そのものですから、欧米のようになるとは言い切れない。確かにスーパーマーケットはアメリカ文明そのものですから、世界中に普及しますが、完全にアメリカのようになることはありえない。我が国にはウオルマートは出現しないし、ウオルマートが進出しても、大きな勢力になれない。イオンはグローバル10を目指しますが、これは大きな過誤でしょう。イオン自体のノウハウが、とりたてて素晴らしいものは何もなく、規模しかないからです。
 トヨタが世界一の自動車会社になるのは、トヨタ生産方式という管理技法があり、そこから生み出される抜群の生産性、技術開発力です。イオンを含め、日本のスーパーのどこにそういうものがあるのか、強いて言えば生鮮品の扱い程度ですが、とても世界に通用する技術とは言えない。
 同じように卸売業が機能別に再編される可能性は、あまり高くない。よほどの才能が新たな卸売業を構築しない限りは、難しいというか、多分、まったく別分野から参入して、卸売業の一部の機能を毟り取る形で成長し、従来からの卸のマーケットが縮小する形、通販に宅配業者が参入しているように、今とさほど変わらない形でしょう。