s50年代 変態=肉体の夢


 ここに表現される変態は、1980年に糸井重里が「びっくりハウス」で始めた「ヘンタイよいこ新聞」で表現されたヘンタイではありません。「ヘンタイよいこ」の約束の『8.ヘンタイよいこは、変態にならないように、じゅうぶん注意します。』という注意する方の“変態”です。糸井さんも、よく分かっていたのではないかと思います。ヘンタイはヘンタイのままではいられないことと、時代は闇を欲していたことを。糸井さん自体はヘンタイのまま生きていきますが、突き動かす力は変態の方がはるかに強く、激しいものであり、上滑りさせよう、記号化しよう、無化しようというニューアカ的志向を超えて、変態に向っていきます。


(肉体の夢=変態)

 もう一つの精神的な退廃は、性的異常として出現します。性は、江戸の性に見られる、笑い飛ばすような解放感・健康とは懸け離れた、陰惨な変態そのものに滑り落ちていきます。極端な残酷さは、この豊かな時代にはびこる陰湿なイジメ、自らの生活を守ろうとする保守的で、勇気の欠片もない卑怯な振る舞い、見てみない振り、他人への無関心と想像力の欠如の蔓延から生じていると思われます。

 被害者を襲った精神的なトラウマ、癒されることのない深い傷は、次の惨劇を引き起こしていきます。この終わりは、まだ、見えません。

 この時代にその後に起きてくる異常性を予期し、発信を始めたという意味でのペヨトル工房の同時代性は世界的な水準にあったでしょう。
 RE/SEARCHという雑誌を出しているという若いアメリカ人が、たまたま、東京に来て、夜想を見かけ、興味を持って訪ねてきたことがあります。そして自分達の出している雑誌を何冊かくれました。彼はアメリカの夜想だと、興味深く感じたようです。アメリカ人の方も、夜想の死体特集や怪物畸形特集などを興味深く見ていました。業務提携みたいな話をし、これから情報交換しようと言って帰って行きました。

 何回か、その後に接触はあったものの、提携話は、立ち消えになったようでした。理由は分かりません。ただ、それだけなのですが、時代が、この方向で変わっていくのだという思いを強く感じました。RE/SEARCHは、その後も出版され、映像の販売もしており、カルト的な世界では、よく知られた存在になっています。
            

 付け加えておきますと、ペヨトル工房で編集やデザインに携わっていた人達には変態趣味が欠片もなかったことです。偶々、面白そうだったからヤッてみただけであり、それ以上のものはなかったことです。彼らの本音は、世の中の見方とは逆に、こういう変態は生理的に嫌いだったことです。ある種、これは私の趣味であり、彼らが私の趣味に合わせた部分であった。こういう趣味の人の期待を裏切るものであったことは、一面ではWAVEなどメジャーとの付き合いができた理由であり、一面では時代の最先端でい続けることができなかった理由でもあります。