家庭用ビデオが猛烈な勢いで普及し始まった時、最大のマーケットは名画を中心とした映画ではなく、ポルノであったことは、なかなか人間の欲望という眼で見たときに、面白い現象です。個人で買うにはビデオは当時、1〜2万円程度していましたから、一度見れば、良いという映像は、ビデオレンタル・ショップに行って借りてみるという消費形態が生まれます。当然のことながらビデオの版元は激しく抵抗しましたが、消費者のニーズには勝てません。そしてポルノは、買うものではなく借りるものとして消費者のニーズに応えたのです。この下のグラフにあるようにビデオレンタルは急激に伸びていき、その需要の大半がポルノであったのです。

別冊宝島「80年代の正体」、小浜逸郎「すべてのセックスが商品になったとき、もっとリアルで安直な「性」、AVが生まれた」より

AV(アダルト・ビデオ Adult Video)

 AVの歴史を参考にしながら、記述します。

 82年に宇宙企画からアダルト・ビデオという言葉が作られ、84年、"動くビニ本"といわれた美少女本番シリーズが販売されて大ヒットになります。女優の清潔感がセールスの上での重要な演出点であることが確立されると、本番の有無よりも、美形という女の子の質が成功要因になるとされ、85年にはヘルス出身の早川愛美、裏本出身の渡瀬クミがAVデビュー。女子大生AV女優の元祖といわれる、駒大生卒・元ミス駒沢の森田水絵がAVデビューします。

森田水絵
Movie Kingdumより

 86年頃には家庭ビデオデッキが全国的な普及から、ビデオレンタルショップが全国的な広がりをみせ、マーケットは拡大していきます。当時のAV業界の大スターは小林ひとみで、「禁じられた関係」でデビュー、1万本以上の大ヒットとなります。女優小林ひとみ、秋元ともみ、AVからTVのバラエティに進出し、本音トークで小ギャルから絶大な人気を集めるようになる飯島愛などの誕生により、「AV女優」という言葉を生み出していきます。演技力はともかく美人、顔の良さがこの時代のポイントで、以降に出てくる淫乱系と異なるのは清純さを強調する面が強くあったことです。


秋元ともみ                                         小林ひとみ 

飯島愛                                   村上麗奈

葉山レイコ                               松坂季実子                             御藤静

1985年に1200円だったレンタル料金はみるみる下落し、多分300円/本が長く続いたように思いますが、競争の激化と需要の下落の中で100円レンタルを標榜する店舗まで出現します。


井上三太「TOKYO GRAFFITIE」

 86年に、伝説的アダルトビデオ、村西とおる監督・黒木香主演の「SMっぽいの好き」が発売され(SMの項参照)、村西とおるも、黒木香の、その特異なキャラクターでテレビのバラエティ番組に引っ張りだこになります。この頃がAVのピークであった感じがします。

 それ以降、素人本番などが続く形で、ラブホテルの消し忘れの流行があり、次第に内容が過激になっていきます。SM、スカトロ、痴漢、近親相姦、レズ、ホモなど、およそありとあらゆる性的嗜好が題材となり、個々のマニア向けの色彩が濃くなっていきます。好き好きが強まれば、それだけ個々のマーケットは小さくなり、大量販売は期待できなくなりますし、マニアなるが故に、同じことの繰り返しになっていったからです。色物といわれたビデオが供給の中心を占めるようになると、明らかに限界でした。他人の性行為をいくら見続けても、そこに何かがある訳ではなく、エロスのロマンが打ち砕かれていく結果しか生まれてこなくなります。

 以降、インターネットが普及していく90年代の後半には、海外から無料で配信される本番Sex画像が氾濫し、映像媒体の主役がDVDに置き換わり、エロ雑誌に長時間のDVDが付録として付くようになると、ビデオ・レンタルショップは壊滅します。若者達はAVを離れ、二次元のセルアニメ、裸にもなっていない絵に興奮の中心を移していくという皮肉な結末を迎えつつあります。


(裏ビデオ)
 自主規制機関である日本ビデオ倫理協会は、3分以上の連続した性交描写を許可しておらず、ハードコアの表現を規制していました。こうした背景から裏ビデオと呼ばれる、いわゆる本番、性器を見せる作品がブームになります。裏ビデオは、裏本と同じく、歌舞伎町などの暴力団が経営する店で販売されるようになります。
 『洗濯屋ケンちゃん』や田口ゆかりの『サムライの娘』『ザ・キモノ』などの作品がブームになったようですが、この下の写真で紹介されたものの一つも見たことはありません。裏本よりも、もっと流通量は少なく、裏ビデオのみに出演する女優が有名になることもありませんでした。何しろ何回もダビングを経るので画像は決して良いとはいえないものでした。AV女優のケシ忘れというか、処理される前のビデオなどを見たことはありますが・・・・。まぁ、中身はAVと変わりませんから、性器が見えたからといって、それで興奮が増すというものでもありませんから。裏本の方が性器をくっきり見せるという意味で衝撃力は強い感じがします。当時は値段も高かった。確か7,8千円を超えていたのではないかと。
 今はどうかと言うと、あまり需要はなくなったのではないかと思います。見る気になればインターネットで、いくらでも画像を拾えますし、それがどうしたという部分も強まっています。


 写真は下川耿史「性風俗史年表」昭和戦後編

青い体験                     極悪                     夜まで待てない


忘れな草                     レッドゾーン                  みえちゃった
レイプハリケーン 写楽1983.6
写楽1983.6


 男の欲望に満ちた題材で突っ走るAV業界ですが、80年代も終わりになる頃には次第に下火になり、新たな男女関係の中の性が取り上げられていくことになります。ポルノ映画が先導していく新たな時代が始まります。ピンクの四天王と呼ばれた瀬々敬久佐藤寿保サトウシキ佐野和宏であり。やがてこの新しい映画の波は園子温にまで至ります。評判から何本かは映画館で、他はビデオ屋で借りて見ました。

 名前が思い出せないのですが、若いカップルのsexをリアルに描いたことで人気女優になった宮川さんを取り上げておきます。
宮川ひろみ