ヘルムート・バーガー

少女から少年へ  そしてやおい

少女
 70年代から、不思議の国のアリスが強い関心を持たれ、以降、少女の特集が、様々なメディアで組まれてきました。そういう芸術的なレベルを超えて性的な意味での関心が女子大生、女子高生へと低年齢の女の子に向っていました。少女に対する関心の最終到達点というべきものは、異論は覚悟の上ですが、吉田秋生の「吉祥天女」ではなかったかと思います。これ以降は、性的な女性からの本音が溢れる漫画、内田春菊、岡崎京子などが代表することになるからです。
     

少年

(ペヨトルの話)
 そういう背景の中から、夜想で少年の特集が組まれました。 屍体特集以上の影響を与えたと思われます。

 男というものの男性美は、筋骨隆々として、胸板の厚い、汗臭いもの。それは三船敏郎であったり、石原裕次郎、長嶋茂雄、高倉健に代表されてきた。決して、市川雷蔵や田宮次郎ではなかったのです。この特集によって、『美少年』という、一つの流れが汲み出されたのです。それは今日において、まったく普通のこととなり、逆に昔の男らしさは、まるでホモのように、かつてとは逆になってしまった。

 この本は、よく売れ、ベルメールを超えるセールスを獲得し、小川君の出世作となります。小川君は、本の編集に意欲を失った彼に替わって実質的な編集長になっていきます。実際、以降、夜想、WAVE、Ur、銀星倶楽部と続く雑誌群のほとんど、小川君とデザイナーの彼女によって、8割近くの本が作られていくのです。

 私としては、本が出来た時に、小川君にも言いましたが、不良少年、魔的な少年を入れ込むべきだと。次の機会かなと思いましたが、相変わらず、二度と同じ企画で本が作られることはありませんでした。実に、馬鹿げた話ではありますが・・・。


 少年特集では、江戸の若衆やヒトラーユーゲント、ビスコンティの「ベニスに死す」などが、取上げられています。ここで提示されたのはゲイをベースにした少年であって、それ以外はない。江戸以前の、室町の世阿弥を代表格とする神と交信する少年や、神のような残酷な不良少年もない。 ビスコンティは美少年が好きでした。山猫では若きアラン・ドロンを使ってますし、このヘルムート・バーガーも多用しています。時代は美少年の方に切り替わっていくのですが、それが一般的になるのは90年代も半ば過ぎです。まぁ、この手はやはりナチスですな。
 
                                         映画「ベニスに死す」のBjorn Andresen
ヒトラーユーゲント地獄に落ちた勇者から
ドリアン・グレイの美しき肖像のバーガー

やおい
 この美少年への愛好は、男のホモ、ゲイを活気付けただけではありません。女性が美少年、しかもホモセクシュアルであるという、性的に女性にとって安全、危険性のない存在として、コミケの同人誌から奇妙な形で盛り上がって行きます。ホモセクシュアルをファンタジーとして捉える感覚です。自分たちにはけっして手の届かない男の友情への憧れ。なんとなく危ない倒錯の快楽。この奇妙な需要に反応したのは南原四郎さんです。月光、月ノ光、牧歌メロンA、ラッキーホラーショーを次々と発行しました。他に女性向け耽美雑誌としてALLAN、JUNEがあります。

 「月光」の発売はペヨトル工房的には似たような作り方、特集の組み方をする雑誌が出たということで注目していました。誰が作っているのかも興味がありました。「月光」は夜想に比べて中に素人の漫画を入れるなど、ちょっと違うなというのが我々の結論でした。あれが女性向け耽美雑誌であるとは思ってもいなかったというのが正直なところです。彼女達にやおい本を作るネタを提供していた、女性達の幻想を掻き立てる何かとしては、分かりやすく、平板な内容であったことが良かったのでしょう。読者層をどのように考えるという意味では、南原氏の方が商売人であったのでしょう。


若い女性向けの耽美雑誌
ALLAN#6 1981.10より

 下の画像はネットで拾ったもので、元の漫画は誰が描いたものか分かりません。




 美少年同士がホモ・セクシュアルの愛情関係を結ぶというのは、90年代に入る頃に、Boys Loveという漫画ジャンルができ、その熱狂的な愛好者が若い女性たちであり、やがて腐女子と命名されます。