サイバーパンクCyberpunk/メタ・フィクションMetafiction

 Wikiからの要約が適当と思いましたので引用します。
 『サイバーパンクは、人体や意識を機械的ないし生物的に拡張し、それらのギミックが普遍化した世界・社会において個人や集団がより大規模な構造(ネットワーク)に接続ないし取り込まれた状況(または取り込まれてゆく過程)などの描写を主題のひとつの軸とした。さらに主人公の言動や作品自体のテーマや構造・機構・体制に対する反発(いわゆるパンク)や反社会性を主題のもう一つの軸とする点、これらを内包する社会や経済・政治などを俯瞰するメタ的な視野が提供され描写が成されることで作品をサイバーかつパンクたらしめ、既存のSF作品と区別され成立した。』
 80年代の代表的な小説として、ウィリアム・ギブスン「ニューロマンサー」がサイバーパンクを代表するものとされています。それ以前の作品群も先駆的な作品として紹介され、私のような昔の人間は、80年代以前の作品の方が肌合いが合うので、そちらを中心にご紹介します。サイバーパンクよりもメタフィクションが中心ですが、メタ・フィクションとすると範囲が広がりすぎるので、この表題サイバー・パンクにしてあります。



P・K・ディック Philip Kindred Dick
 ここに出てくる作家の中で私が最も好きで、作品のほとんどは読みました。彼の小説は、表題が変わっても繰り返し繰り返し同じで、強迫神経症の病患を示すようです。繰り返しの中でも解消されない不安、焦燥、被害妄想が続きます。それが絶妙な味わいとなって、SFの枠を超えた人間の背負う苦しみを表現する形となります。彼が繰り出す無意味なガジェット類は、なかなか楽しいもので、それが苦闘する内心の問題を和らげる働きをします。
 映画になったブレードランナー、トータル・リコール、マイノリティ・リポートを見ていますが、ディックが表現する不安感、苦渋、底なしに落ちていく感覚を表現できている作品はありません。



スタニスワフ・レム Stanislaw Lem
 代表作は「ソラリス」ですが、ディックと同じく翻訳されたものは、ほとんど読んでいます。このソラリスは最近、翻訳しなおされたものですが、最初の訳に比べると数段、良い感じがしました。ソラリスは海に覆われた惑星が1個の巨大な頭脳という話ですが、繰り返し現れる亡霊の凄みはなかなかのものがありますし、その迷路に彷徨いこんでいく感覚の描写は素晴らしいものがあります。浴槽で発見された日記は、特に評価する人もいないですが、紙がなくなった世界での無意味な虚構を重ねていく感覚はぐっぐっとひきつけられます。


ジェームズ・ジョイス James Augustine Aloysius Joyce
 難解なものですから、翻訳がほとんどされずに長い期間たって、この時代、と言っても90年代に入っていますが、翻訳が出てきて、改めて注目された形です。それにしても分かりやすいとは、とても言えない代物です。ユリシーズフィネガンズ・ウェイクなどが翻訳されました。きちんと最後まで読めなかったので紹介はこのくらいに。


トマス・ピンチョン Thomas Ruggles Pynchon
 難解な小説というのは、その内容をしっかり把握できないので、さて記憶が曖昧です。評判になりましたので読みましたが、Wikiにあるような破壊的なユーモアまで感じてはおりません。長編の「X」は読んでおりません。何時、ノーベル賞をもらっても不思議でないとされてますから、もらうと再販されるでしょうが、日本人好みではないので、あまり売れないでしょう。
 Wikiで概要を読んだのですが、覚えていない所をみると、最後まで読み切っていないかもしれません。翻訳の問題もあるでしょうが、展開する知的遊戯にピンと来ないのでしょう。


ドナルド・バーセルミ Donald Barthelme
 サンリオSFで「口に出せない習慣、不自然な行為」(サンリオでは不自然ではなくて奇妙な、という題名)を1冊読んだだけなので、当てになりませんが、なかなか付いていくのに苦労したような。短編集なので読みやすいといえば読めるのだけれど、続けては沢山、読めなかったような・・・。解説にもなりませんが。


ウィリアム・ギブスン William Ford Gibson
 サイバー・パンクの先頭を切る作家です。随分、高い評判が立ち、私もニューロマンサー」 Neuromancer 84年は早速、買って読みました。しかしながら、これまた、付いていけなくて、最後まで読みきれなかったかと思います。その後に何冊か出版されましたが、いずれも途中で挫折しました。ニューロマンサーは最初の舞台が日本だったので、ブレードランナーにも相通じるものがあったせいでしょうか、人気は高かったですが、果たして皆、読み込むことができたのかどうかは分かりません。翻訳の問題もありますが、SF慣れしていない私には苦手です。ディックにしろ、レムにしろ、体裁はSFですが、中身は全然、SFじゃないから読めるのでしょう。
 まぁ、そんな訳で、ご紹介は他の方に。ここでは並べるだけというか、こういう流行があったのだと理解して下さい。Wikiによれば、大友克洋の漫画AKIRAや甲殻機動隊、映画MATRIXに強い影響を与えたとされています。近未来もののマシン類やサイバー攻撃など、あの手のめくるめく感覚を小説の中で楽しめないといけないのでしょう、きっと。




スティーブ・エリクソン Steve Erickson
 スティーブ・エリクソンはここに置いて良いのかは、やや判断に苦しむところであります。ラテン系の文章の感覚が私には、よく合いまして、この人の作品は相当量、読んでいます。こういう連続した悪夢は強く感じることができます。描写する世界は一見正常なのだけれど、異常に包まれている。


 まぁ、何だかんだサイバーパンク、メタフィクションと言いながら、自分の好きな作家以外の紹介はなおざりですな。