〜男に貢ぐ、男を漁る〜


男に貢ぐ
 金融機関で奇妙な事件が連発します。 いづれもベテラン女子行員が男に貢ぐために、男を繋ぎとめておくために起こした事件だということです。男子行員の犯罪も多いのですが、 女子行員の詐欺に強い関心が向くのは、一般に女子行員は真面目で働き者というイメージがあり、ベテランともなれば何であの人が・・・と絶句させられる、 その上に背後にいる男の影、男の言いなりになる女というものでしょう。しかし、バブルに向っていく中で、 この手の犯罪が完全に影を潜めるのは、セキュリティの問題もあるでしょうが、男に貢ぐ女という構造が、ここでほぼ消えて強い女が前面に出てくる時代を迎えるからでしょう。写真は「女性犯罪史」コアマガジン2006年からです。


滋賀銀行9億円詐欺事件  1973年 奥村彰子
 バブル景気のはるか以前に発生した事件ですが、この手の犯罪で発覚した最初のケースであったでしょう。 9億円という金も凄いです。たまたま知り合ったタクシー運転手が競輪狂だったことが彼女の不幸の始まりです。 定期預金の支払伝票を偽造することで金を引き出すという単純な手口で5年にわたって詐取するのです。 彼女自体はほとんど金を使っておらず、質素な暮らしをしていることも、これらの事件の共通点です。


足利銀行2億円詐取事件 1975年 大竹章子
 「国際秘密警察員・石村」と名乗る阿部と知り合った大竹は、結婚話に釣られて要求された借金に、自分の預金や家族から借金した金、やがて銀行の金に手をつけ、 白地の手形・伝票を使って、金を引き出し、数年にわたって貢ぎ続け、逮捕されたときも男の本当の名前も住所も知らない状態で、典型的な詐欺に遭い、それを勤務先から金を引っ張るという形で地獄を見たのです。


三和銀行オンライン詐欺事件 1981年 伊藤素子
 この事件が最もよく知られているのは、朝9時の始業と同時に東京・虎ノ門支店などにオンライン端末を使って1億8万円を架空送金し、直ちに早退、 伊丹空港から空路羽田に向かい、昼過ぎには都内支店で1億3千万円を現金化、待ちかまえた共犯者に手渡して羽田発国際便でマニラに逃亡。 男はやって来ず、マニラで6ヵ月後に逮捕されるのですが、日本のマスコミが殺到し、拘留されている伊藤との面談がワイドショーでTV放映され、 「好きな人のためにやりました」が流行語にもなったのです。今でも話題になるくらい変な人気があります。


男を漁る
 ディスコ・ブームの中でアメリカ進駐軍基地の周りに若い男女が群がります。ダンスが巧く格好の良い黒人男性へ若い娘達は強い興味を抱く。これは戦後のパンパンと呼ばれた売春婦とはまったく異なる動機であり、金が目的ではない、逆に金を払ってでも寝たいという欲望が生まれてきたことです。白人信仰は根強いものではありますが、しかしこの時代はむしろ黒人男性でした。米軍基地周辺では物足りなくなった若い女性の中にはアメリカ遠征までするようになります。
イエロー・キャブ  
 そういう彼女たちはイエローキャブと呼ばれ、日本人(黄色人種=イエロー)の女性はタクシー(キャブ)のように気軽に乗れる(性交ができる)という陰口が黒人、白人に囁かれ始めます。この性意識の変容は大人たちを困惑させるのに充分でした。彼女たちの実態をドキュメントで紹介したのが家田荘子さんで、上記の本で発表します。彼女は既に「極道の妻たち」でノンフィクション・ライターとして知られておりましたが、この作品もまた、センセーショナルなものでした。
 ほとんど時を同じくして、アメリカで“ミスター・グットバーを探して”という映画が作られ、大きな反響を呼び起こします。独身の女性が夜の町を1人でさすらい、馴染みの酒場で、行きずりのセックスを求めていく姿です。時代は大きな転換期を迎えようとしています。性Sexが、バブル時代の援助交際、ブルセラショップへと、貧乏のためにではなく、遊ぶ金のために、男を漁る形に変容し、強い女の時代に向っていこうとしているのです。


いちゃつく若いカップル
 この記事と「女の本音」で書かれる話とは矛盾しないものです。性の問題がかつて男の側からしか主張されなかった時代から女の側の発言が吹き出てくる状況です。この頃から、人前で、道路や電車の中で抱きついている若いカップルの姿を見かけることが多くなりました。人目を気にせずに抱き合う姿は、欧米人の抱き合う姿が乾いた、あっさりしたものとは違って、ひどくベタついたもので、気持ちの悪いもので、見せびらかし、の意味の濃いものでした。こういう姿はバブル崩壊以降にはほとんど見かけることがなくなり、あれは何だったのだろうかと、思います。