家庭菜園病害虫
アマチュアでもよくわかる防除対策
トマト:病害対策
                                             大阪府立立農林技術センター 草刈 眞一
 
食卓を飾る多くの野菜を家庭菜園で栽培することは楽しいこと。新鮮な野菜が収穫できた時の喜びは格別なものだが、時には病気や害虫が発生して、せっかくの菜園を台なしにしてしまうこともある。
 今回はトマトに発生する病害虫の被害とその対策を病気と害虫に分け、まとめていく。最小限の防除で安心な野菜作りをサポートしていきたいと思う。


栽培時期と病害対策


◆トマトはナス科の野菜で、連作を嫌う作物。同じナス科のナスやジャガイモなどの栽培を続けると、病気が多くなる
◆栽培にあたっては、畑の水はけ、品種の選択、接ぎ木栽培などの考慮が必要なこともある
◆トマトには、多くの病害に抵抗性を持つ品種もあるため、萎ちょう病、ウイルス病、葉かび病、斑点病などの抵抗性のある品種を選ぶようにする。また、青枯病などの発生するところでは、接ぎ木苗を利用するのも大切

育苗期〜定植時までの対策(露地栽培 3月〜4月下旬)
・この時期は、発芽した苗が腰折れ状態になる立枯病が多く見られる。育苗には新しい土を使うようにし、水のやりすぎに注意すること

生育期間中の対策(露地栽培 5月〜6月下旬)
・降雨の多い時期に入り、病気の発生が多くなる。雨による土の跳ね上がりを防ぐため、稲ワラを敷いたりビニールマルチを張る。梅雨に入ると疫病に注意が必要で、薬剤の予防散布を心がける
・この時期はトマトの生育が盛んになり、脇芽かきの作業が増えるが、作業は日中、気温の高い時に行う。汁液によってウイルス病が伝染するので、モザイク症状の株は早めに除去しておく

収穫期の対策(露地栽培 7月〜9月)
・気温が高くなる時期で、萎ちょう病や青枯病の発生が増加する。下葉が黄色になって萎ちょう(しぼみ、しおれること)すると、萎ちょう病が疑われる。また、青枯れ病の疑いがある
・このほか、輪紋病や斑点病などの発生も増加する。多湿にならないように潅水量に注意し、作物を観察し、葉に病変が見られたら適宣、薬剤防除をする

主なトマトの品種と抵抗性
品種名 萎ちょう病 根腐
萎ちょう病
半身
萎ちょう病
斑点病 葉かび病 TMV
(タバコモザイクウイルス)
線虫 青枯病
レース1 レース2
ハウス桃太郎 - - - Tm-2a -
桃太郎8 - - Tm-2a/+
桃太郎ヨーク Tm-2a/+ -
サターン - - - - Tm-1 -
強力米寿 - - - - Tm-1 - -
千果 - - - - - Tm-2a/+ -
  台木品種名
BF興津101号 - - - - - -
LS-89 - - - - - -
影武者 - - Tm-2a/+
ドクターK - - Tm-2a/+ -
※台木品種は、接ぎ木の台木として用いる。 ※抵抗性あり◎←○―△→-抵抗性なし
※TMVのTm-1、Tm-2aは抵抗性遺伝子の違いを示す。 ※Tm-2a/+はへテロに遺伝子を持つことを示す。


トマトの病害虫と症状
1.モザイク病 2.葉かび病 3.斑点細菌病 4.輪紋病
葉がモザイク症状となる。生育し
た株では、頂葉に緑の濃淡模様の
モザイク症状が見られる。また、
激しい場合には、葉が奇形や糸葉
症状になったり、果実にえそ症状
がみられる。
葉に斑点が生じ、その病斑の裏
側に灰色のかびが見られる。多
発すると葉が黄色くなる。
葉に淡褐色の小斑点が見られる。
果実に藻淡い褐色の小斑点が発
生する。(元・大阪濃技センター
田中 寛 原図)
葉に暗褐色で年輪上の模様のあ
る大型病斑ができる。
5.うどんこ病 6-1.疫病 6-2.疫病 7-1.かいよう病
葉に白色円形で表面が粉状の病
斑を生じる。(元・大阪濃技セン
ター田中 寛 原図)
葉に周辺部がぼやけた暗緑色の
病斑が生じ、急速に広がる。病
変部分周辺に白色霜状のかびが
認められる。(元・大阪濃技セン
ター田中 寛 原図)
果実の症状。果実ではぼやけた
褐色の斑点ができる。
果実に鳥目状の斑点ができる。
(元・大阪濃技センター
田中 寛 原図)
7-2.かいよう病 8.軟腐病 9.尻腐病 10.苗立枯病
葉では黄化して、小葉が上部へ
巻き上がるような形になる。
茎の内部が褐色になり、ずるけ
て腐敗する。においをかぐと腐
敗臭がする。果実では軟腐状に
腐敗する。(元・大阪濃技センタ
ー田中 寛 原図)
果実の尻の部分が褐色に変色す
る。(カルシウム欠乏症)
苗が腰折れ状態となり、枯死する。
11.萎ちょう病 12.半身萎ちょう病 13.青枯病 14.
トマト葉かび病の分生子。
15.
下葉から黄化し、次第に上部の葉
へ被害が広がり、茎頂部が萎ちょ
うする。やがて株全体が枯死する。
茎を切断すると維管束が褐変して
いる。
株の片側の葉が黄化萎ちょうす
る。茎を切断すると維管束に褐
変が観察される。
株に萎ちょう症状が発生し、やが
て、青枯状となって枯死する。茎
を切断しても維管束に顕著な褐変
は見られない。切断した茎をガラ
ス管ビン内の水につけると、白色
の菌泥が見られる。
トマト疫病菌の遊走子嚢。


トマトの病害虫の発生時期と特長
病害虫名 防除対策
薬剤による防除 その他の防除対策など
モザイク病
(写真@参照)
- ・抵抗性品種を利用する
・アブラムシを防除する
 (寒冷紗をかける)
・モザイク症状や葉に奇
 形の見られる株を除去
 する
・脇芽を摘む時、ナイフ
 を使わない(モザイク
 病の伝染を助長するの
 を防ぐ)
葉かび病
(写真A・M参照)
・カスミンボルドー
・トリフミン水和剤
・ベンレート水和剤
・抵抗性品種を利用する
斑点細菌病
(写真B参照)
・カスミンボルドー ・マルチ栽培
輪紋病
(写真C参照)
・ロブラール水和剤
・カスミンボルドー
・オキシボルドー
・マルチ栽培で被害が
 減少する
うどんこ病
(写真D参照)
・葉かび病の薬剤で
 同時防除ができる
-
疫病
(写真E・N参照)
・オキシボルドー
・カスミンボルドー
・カダンU
・薬剤の予防散布が大切
 (露地栽培では梅雨期に
 注意)
かいよう病
(写真F参照)
・カスミンボルドー ・種子伝染するため、
 消毒済みのタネを
 使う
軟腐病
(写真G参照)
- ・連作で発生が増加する
尻腐病
(カルシウム欠乏症)
(写真H参照)
・カルクロン(塩化カ
ルシウム剤)の200
培液を葉に散布する
・作付け前に十分、カル
 シウムを施用する
 (10uに1kgの苦土石炭
  を施用する)
苗立枯病
(写真I参照)
・オーサイド
 水和剤80
・播種や育苗時には、
 新しい土を使うよう
 にする(焼いた土を
 使っても良い)
萎ちょう病
(写真J参照)
- ・連作すると多発する
・抵抗性品種を利用する
・接ぎ木栽培にする
半身萎ちょう病
(写真K参照)
- ・連作で被害が増加する
・抵抗性品種を利用する
青枯病
(写真L参照)
- ・連作で被害が増加する
・抵抗性台木へ接ぎ木す
 る



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