商人宿

 商人宿の歴史は、それこそ江戸以前にまで遡るでしょう。ただ、かつてのような商業機能は著しく減っていきます。商業機能が残るのは、商人宿よりも地方都市の場合は高級ホテルのロビーでの商談くらいのものでありました。商人宿は問屋やメーカーの営業マン、それも下っ端連中でした。
 これは商業機能というよりも、思い出としてのページです。地方出張の折にサラリーマンが泊まる所だったからです。いまだビジネスホテルはできておりません。ビジネスホテルができてくるのは1980年代だからです。昭和40年代では多くが駅前にあった商人宿でした。私も何度か泊まりました。和室で当然のように鍵はなく、トイレ、洗面所、風呂は共通。食事は確かお膳に乗せて持って来てくれた。後になると食堂で食べましたが。民宿は昭和40年代くらいから出現しますが、都会にはありません。私なんかは学生時代は、旅行はこういう商人宿かユースホステルでした。こういう商人宿ですと、複数で連れ立って出張に出ますと、同室で、先輩や同僚のいびきや歯軋りに悩まされたものです。


「オリンピックのころの東京」春日昌昭写真
 隣室とは襖1枚へだてただけですから、隣に若い女性なんかがいると、意識したものです。

つげ義春